林檎の話とフットボール事情。



どうしたらいいのよってくらい悩んで、
どうにか答えと行き先を見つけなければと、
からだのあちこち痣だらけにしながら当たって砕けて転がって、
それでも光がまだまだ何処にも見えなくって、
もうだめだ……いよいよだ……助けてほしい…と悶えていると、
……え? ……ええ? ……え!
うーん。こういうことってあるんだなあ。


不思議な出来事に恵まれる日々。


たとえば?
そうだなあ。


そうね、象、象に会いたいと思ってるとするじゃない?
パオーんの象。
「あー、無性だ、無性に象に会いたいー。あの長くてシワシワの鼻に触れて、その穴に林檎をつめて、それで……ちょっぴり苦しい思いをさせたいんだ。モタモタ。モタモタしていたら、ごめんね。じゃなくって、二度と触れられなくなってしまいそうで、こわくって。嫌がられるかもしれないけれど、いつ終わるかわからないんだからさ、だから、せめて、攻めて、責めて、責め切ったところで、踏み潰されるなら、まあ、諦めもつくよなって」
なんて気分だとするじゃない。そんな刹那にトボつく夜半よ。歩き歩き、ミルキーを奥歯に噛む。ちょっと甘い散歩をしてるのよ。
そしたら池袋東口のドンキの前にさ、林檎が落ちてるんだな。
いや、どーみても、それは“落ちて”る。
誰がなんといおうとね、“置いて”あるんでも、“棄てられ”てるんでもなくって、
ただ“落ちて”る。ごろんと、東口ドンキの前に、林檎が落ちていて。
「え?」って思って、それを拾うわけよ。
「なんで落ちてるんだろう。いま林檎のこと考えてた。へんなの」
で、わからんこともあるなーなんてペットショップのほうに歩いていって、
なんの気なしにロッテリアを左にまがると、
象。
そこに象がいるんだ。
おだやかな顔してね、
「待っていたよ」という声がきこえそうな、つぶらなんだ、うるんだ瞳が。








『不思議な出来事に恵まれる』
っていうのは、ひとつ挙げるとしたら、そんな感じかあ。
……って、どんな感じだよって?(笑)
まあ、偶然ってあるんだわ。
べつべつのところで出会った猫の三匹が飛び切りのべっびん、
その全員の胸元に三日月の翳があったんだ、みたいなさ。
しかも鳴き声そっくりでさぁ。
そんなのって、びっくりするじゃない?







キリンカップの二試合。
オプションを作るチャレンジには賛成だよ。
しかしポジションの大半がミスマッチだった。
いかんせん3-4-3に適した選手が足らな過ぎるし、
フォーメーションを換えるより、
4バックをベースにして、
パワープレイ、サイド攻撃重視、4-2-1-3など、
明確なギアチェンジのイメージを共有つつ、
戦い方にテンションとバリエーションをつけるやり方が、
今のチームににふさわしいのでは。


A代表は、南アW杯以降、確実にステップアップしてきたと思う。
ここから、次元を超えたスケールアップを果たすには、
バルサだとかユナイテッド、
ブラジルやスペインなど……超S級のチームには備わっている、
時間をコントロールする感覚が欲しいところ。
リズムを編集する意識っていうかさ。
見る/叩く、構える/迫る、待つ/決めにいく、引き込む/潰す、撒く/刈る……
そういうメリとハリ、それから「/」の間、
間の可能性をもっと有効に使う、突き詰める、武器にする、そんな感覚。
そのまま小説に通じる話だな。


それから、3-4-3の中盤に遠藤選手を残し、
長友&内田のサイドバックをSMFに上げるフォーメーションには、
伸びしろの限界を感じるんだけど、
どうなんだろうな、ザックさん。







ヨーロッパのシーズンも終わり、引退選手が続々と。
ロナウド、ジェジン、平野、三浦淳宏ヒーピアスコールズ、ワシントン、デルサール、グロンキア、アヤラ、G・ネビル、そしてトマソン……
時代に迎えられた名選手たちばかりだ。
一人一人に衝撃のシーン(小憎たらしさも含め)が浮かぶよな。
マジさみしいー。お疲れさまでした。
それから、その名は知られなくとも、地元のファンに惜しまれながら現役をしりぞく、世界中のフットボーラーたち。
あなたたちが、この世に存在している限り、あなたたちの、そのハイライトは恍惚のまま。
さらなる飛翔への祈りを込めて、鳴謝。







なでしこがW杯に臨む。
鮫島選手は、まだ移籍先が決まってないようだけれど、代表メンバーに選ばれた。
ボールキープとドリブルしてる姿が抜群なんだ。
ファンとして嬉しい。
チームそのものも、よい結果に恵まれるように。
アジア杯もよかったし、試合おもしろいだろうなー。







悪魔のトリルは、いくつか聴いた中だと、録音されたシェリングのリサイタルが凄かった。
生き物のような、うねる蛇や、もくもくと湧き上がる煙のような、臨場感と楽想の波動。
ダニー・ハサウェイのLIVE盤以来かも、知れない底の底の底からこみあげる痺れに旋毛がおかしくなりそうだったのは。
おさえの利いた演奏だからこそ、聴き手の高ぶりを掻き立てられるんだよなあ……。
鳴らすのは自分でも、鳴るひろがりは、相手の心にあって。
理屈じゃわかるけど「できるの? おまえ、それ書き物でやれてる?」って問うてみれば、んー、精進しなきゃだわ。







乾いた心に 涙も涸れ
黒い 黒い 驟雨にうたれる 雨ざらしの君を 今夜も思う
喋らないでいい
ただ一言だけ 
扉の わるい夢の その扉のありかだけ 訊かせてくれ
裂くための爪と 咬むための牙だろう
傘でなく 仇となり 君の前に立とう
狂ってくれ
不倫な くちづけより 焦れる
それこそ とこしえの痣