金曜コラム『繰り返される神話』〜五輪フットボール

●日曜だけど


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2012/0729/sun
金曜コラム 004
『繰り返される神話』〜五輪フットボール

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●うそつきと安売り


五輪男子フットボール
いつものことっちゃいつものことだが、新聞・ネットに“奇跡”だとか“衝撃”みたいな言葉が踊る。いくら優勝候補のスペイン相手だったとしても、あの程度のチームに勝ったくらいで? 安売りも甚だしい。
今夜の試合、「スペインよりモロッコのほうが弱くて、日本がボールを持つ時間帯が長くなるので期待できる」とは、どういうソースをもとにコメントしてるのか、女子解説の大竹さん。
わからないことを言わせようとするテレビ業界と、それに抗わない日和見は、現在の女子チームのコンビネーションよりはるかに流麗なセットだ。



●五輪で2試合を終えた“なでしこジャパン”は
 いまだスピルバーグしていない


澤選手の運動量があがってこない。
昨日のスウェーデン戦にしても、交代は妥当のように思えた。(男子監督の関塚さんに求めたい決断力、勝負度胸、分析力……言い出したらきりがねぇぞ!)
チームワークもまだW杯の頃みたいなクオリティにないし、全体的にショートパスのミスが多くて、流れが掴めそうになっても自ら手放している様子がある。
FW(7番の位置)に大野選手、左サイドに川澄選手を置く布陣も、それまでの右・大野/左・宮間が、右SB近賀と左SB鮫島とのセットで培ってきたコンビほどの流動性や連動性は見られず、まだまだこれからの段階に見える。


若干のちぐはぐさ、手探り感。
プラス、中2日での連戦が続き、これからどうなるのか ――


カナダ戦、スウェーデン戦ともに、総合力でひとつ、ふたつはクラスの違いを感じさせていたのに、相手も試合も捉えきれず、得点シーン以外のシュートはほぼ枠に飛んでいない。カナダ戦の先制点はSBも加わったコンビで左サイドを崩し、何度も練習してきたであろう連携でもってきれいに得点したにも関わらず、一気に上向きになることもなかった。
体操の内村選手のように、深層心理に圧がかかっているのか?


このチームのポジティブは、大儀見選手の仕上がりが抜群によいこと。大儀見選手のスパイクにだけボールを吸い寄せる磁石でも付いてるのかってくらい、トップ(FW)にボールが収まる。
攻撃はもとより守備においても、ここでポイント(始点)が作れているから、大崩れしない。
W杯では一人だけ流れに乗れず、試合後も悔し涙していた大儀見選手が躍動する。フィジカルじゃ大人と子供くらいのギャップを感じさせるヨーロッパ・アフリカ系の選手相手に、なでしこが体をぶつけ、敵選手をなぎたおす痛快感。トレーニングマッチから好調だった大儀見選手が、ここまでのMVPだ。



●“のりお”がスピルバーグする未来


なでしこのストーリーは、第一部『W杯優勝編』、第二部『五輪で優勝編』・・・・・そして歴史的な父性となった佐々木監督(自称“スピルバーグのりお”)が第三部『父殺し編』は、ついにアメリカ代表からスカウト→監督就任し、いよいよ敵対する父性として海の向うに降臨〜鎮座、それを日本女子チームがキリングするという神々の時代からの反復 ―― 父殺しのストーリーに違いない。
そのためにはフランス、そしてアメリカを倒す必要があるが、フランスは強い。
そのフランスに、アメリカは五輪の初戦4点取って勝った。
アメリカが強いかって? 言わせるなよ、くらいのレベルにある。
でも、おれはアメリカ女子チームは優勝しない気がしてる。
だからって日本が決勝まで行ってすんなり金メダルを獲るって意味じゃない。
じゃあ何って?
それはまた、別の90分に。