「アラザル」は雑誌の名前。



ギブスが終わってから、盛り上がりのまま「アラザル」になだれ込みましたが、おれは最近まで同人誌っていうのがどういうものなのか、よくわかってませんでした。雑誌を作るにあたっては、必殺仕事人みたいな集まり方が理想だったんですが、それは言ってみればプロフェッショナルな……洗練された商業的なやり方で、まったく同人誌的じゃなかったんだなってことも、よくわかりました。
アラザルで黒川を知ってくれた人もたくさんいるんですが、四号には参加しません。
理由は、しばらく小説など執筆計画がいっぱいだからですが、ときどき「アラザルってユニットなんですよね?」と言われる違和感について、いろいろ考えてたのも事実だから、これも大きな理由だと思います。
アラザル」はバンドでもなければ劇団でもなくて、おれにとって雑誌なんです。
だから、ユニット・アラザルって言われるのは、たとえば「少年ジャンプ」に書いてる漫画家を「ジャンプ・サークル」ってくくったり、「アサヒ芸能」で記事を書いてる人たちを「チーム・アサヒ」と呼ぶような正体のない話だと思ってました。
アラザルで書いている人には、おれと同じように感じながら、もっと魅力ある雑誌にしようと内から頑張ってこうとしてる方もおられるし、ユニットとしてやっていくことに可能性を見出してる人もいるんだと思います。おれにしたって、そういう集団的なプレーには馴染めない心身なだけで、この<批評ユニット>っていうのは可能性のあるアイデアだってずっと思ってます。
なによりも、熱意をもって何かに打ち込んでいる人にはエールを送りたいし、つよい共感もある。これから「アラザル」がどうのように変化していくとしても、執筆者同士の議論や切磋琢磨によって運営されていくのだから、それがマガジンとしてだろうが、マシンガンとしてだろうが、マジンガーZとしてだろうが応援します。
言わずもがな、ときに感傷的に、ときに感情的にやりあってきたギブス卒業生、一人一人とは、これからもライバルとしてパートナーシップの持続や、よい緊張、よい刺激の共有があると信じています。
……なんていう話はもー伝達済みでして、いや「アラザル」のMTGは風通しもいいし、集まりや飲み会は年齢性差に関係なく、言いたいことをがんがん言い合える雰囲気で、もう前々から何人もの執筆者に話してきてるので、この記事はもちろん、アラザルに書いてる人じゃない人に向けて書いています。「なんでいま?」っていうのは「笑えるくらい売れないから恐るべき在庫の山っつーか四方にそびえる壁にブツかっては飛びぶつかってはトんでいる笑い声が高笑いなっているよ! いるよ! いるよ! いるよ!」という三原順襤褸雑巾のようにやり倒された登場人物に連呼させたセリフを思わずにいられない、むごたらしいセールスの「ある夜のエクス」ですが、しかし幸いなことというか何よりなのは「ある夜のエクス」を出したことで様々な場に恵まれ人に出会い、そういう貴重な機会に「あ、ユニット・アラザルの黒川さんですよね? ブログも読んでますよ」って言われるようになったので、あ、いや、それはそうなんですが、そうじゃないんですよっていう話を、ここに書いておこうというわけで、黒川にとってアラザルは雑誌であって、いまはアラザルを応援する一人の物書きということで、あらためましてこんにちは、という話の続きでフットボールの雑感を少しすると、かなしみがもれなく左岸に着くという。





CLセミファイナル:1stレグ
インターミラノ×FCバルセロナ


これからフットボールを楽しみたいと思ってるかたは、ぜひバルサについて調べたりゲームを見たりしていだけたらと思います。まあ既得利権と保守保身と甘い汁と人真似が大好きな人にはお勧めしませんが、そうでないならば、フランコファシズムに対し、このクラブとサポーターがどのような抵抗を見せたかから、FCバルセロナというアイデンティティを浮かび上がらせていくカルラス・サンタカナの「バルサバルサバルサ!」という一冊は楽しめると思います。
そうこうしているうちレアルマドリードというクラブが大嫌いになったら、そのときはぜひ杯を! アミーゴ。


というわけで(?)思い入れたっぷりあるFCバルセロナは、おれにとってクラブ以上のクラブですが、この日のCLを戦ったチームは、勝利にふさわしいフィットネスになかったですね。アウェイで先取点を挙げたものの、インテルに三点の逆襲をくらって負けてしまった。
アイスランドの大噴火によって飛行機に乗れず、バスで900kmの陸路を移動した疲労があったんでしょうか?でもこないだのアーセナルのように、シーズンの終盤でかなり疲弊しているようにも見えました。一点取ったペドロが、今シーズンのバルサを何度も救ってきてますが、そうはいってもイニエスタが欠場してるのが辛いですね。去年のバルサとスペイン・ナショナルチームの驚異的な完成度は、今考えると「チャビ&イニエスタ」という二つの心臓があるズル(といいたくなってしまうほど惚れ惚れするキープ&エクスパンドの連続でした)が故だった?
そしてバルサは運動量と高さとテクニックを兼ね備え、MFもDFもハイレベルでこなせるしなやかなアフリカン、ヤヤ・トゥレもゲームに使えない。ヤヤ・トゥレ。グネグネリ・ヤヤ・トゥレヤヤ・トゥレ。グネグネリ・ヤヤ・トゥレ。いやー連呼したくなるネーム。いいっすなー。
さっき書いたように、このゲームのバルサはチームとしての運動量が乏しかったかな? 後半始まったばかりのテレビ画面に、すっかり足が止まってしまっていた……みんなボールウォッチャーになってるなんてゆーバルサも、この数年ではじめてだったかも。空しく繰り返されるばかりの散発に終わるアタックを見ていて、あーここにイニエスタがいたらドリブルとかでグリッチを埋めることもできるし、パスゲームに切り替えて自身は再び細かいダッシュ&ストップを繰り出してチームにエネルギーを注入するかなーとか思ってゲーム眺めてました。いつもどおり気迫はみなぎっているものの、どこか精細をかいた印象というか……かなり容易に振り切られるシーンがあったカンテラ上がりバルセロナの魂ことプジョルの姿も、エネルギーに欠けるな、むごいな、という。
この辺は、疲労の蓄積度とかコンディションが上がってない件とかは、バルサをずっと見てる人に聞いてみたいですね。このゲームに限っての老耄した様子だったのか、それとも現在はこれくらい厳しい状態でリーガも戦ってるのか……。



一方、知将モウリーニョ率いるインテルからゲームを見てみたら、世界一の支配力を有するバルサのパスサッカーをモザイク状に分断して、そーして細かくバルサの組織を散らした一つ一つのブロックに人を配り、ごつごつ当てて止める押す押し込むっていう、まるで四つ相撲を見てるみたいな……インテル得意の「一対一、ガチのやりあい、フィジカルVSフィジカル」に持ち込んだ……とも言えるかもしれないっすね。バルサは小柄な選手が多いので、画面に両チームの選手が重なると、大人と子供みたいに見える瞬間がなんどもありました。ああなっちゃうと部が悪い。アウベスが、マクスウェルが、ブスケツが、ペドロが、リオネルが、チャビが、なんと北欧の巨人ことズラタンまでもがぶつかり合いに倒れていく様に唖然としていたら、誰だ……あ……見つけた……あいつ……岡田JAPANとおなじく混迷にあるマラドーナARGENTINAには召集されてないというサネッティが、コンディションはんぱなかったすねー。縦へのガツガツ出てく勢いは数年前より潜んだって言われてるけど、間合いのとりかたとか体の寄せかたとかファウルのタイミングとか、やっぱりすごいんじゃないかっていうふうに見えました。あとカンビアッソミリートの調子もよさそうだったし(って全員アルゼンチン人じゃないか、なんでアルゼンチンは駄目なんだ? いやそれはディエゴがむちゃくちゃやってるからだ)なにって誰ってスナイデル! アイツやばいね! 元気な選手にしか醸し出せないオーラ出てるなーっていうだけじゃなくて、彼はこのゲームの王様でした。飛んでよし、蹴ってよし、守ってよし、止まってよし、走ってよし、撃ってよし、回ってよし、叫んでよし、見た目もよし。何拍子あるのかと。その拍子を続けていったら6月のW杯の日本戦まで着いちゃって、しかもオランダ代表はアーセナルファンペルシも復帰したし、故障がひどくなければ試合に出ない期間は休養になるので、これまためっちゃ怖いんじゃないかと、おそらくリンチだな……と。



かつてFCバルセロナに革命をもたらした古の聖徒でないほうの「ヨハン”フライングダッチマン”クライフ」というオランダ人がバスケットボールにおける「ゼッケン23バン」みたくフットボールシーンにおいて14という数字を聖なる高みまで昇華させたから世界中のクラブにNO14を背負うプレイヤーが居る彼らみなヨハンの子供たちとして偉大なる父をジャイアント・キリングしようと謀るオイディプス・コンプレックスの宝石だけれどヨハンその実子であるジョルディ・クライフは父とおなじようにバルサのプレイヤーになるがスペインとオランダの国籍選択に揺れ父から譲られなかった天才に飢えるなど悩みの尽きなかった男=息子ジョルディ・クライフは「飛べなかった」のだ、父の、字の、ブライングダッチマン=そらとぶオランダ人、その由来であるリヒャルト・ワーグナーの楽劇「さまよえるオランダ人」そのまま、ジョルディは「さまよってしまった」という「バルサ=クライフ」サーガは2000−2001のUEFACUP「リヴァプール×アラベス」を語らなければゆらゆら帝国=坂本の「ウタ・ッタ/エガ・イタ」あの土管のようなものとしてチュークーであるけれど2008-2009のチャンピオンズリーグバルセロナが優勝したことによって神話となった。そうなるバンだった、艶と粋を毒舌に載せてサーブする聖でないほうのヨハンにそのつもりなんかなかったがジュンバン待ちの中空だったヨハンそのNO14のように今宵からのち「クライフ・サーガ」はタテジマのフォークロアとして響くだろう――09/05/30 黒川直樹



えーと。ちょっと書き疲れた。
最近両肩と首のつけねに卓球のボールサイズの鉄の塊が埋め込まれたかのような鈍痛に悩まされております。
バルセロナが次のホームの試合、フィットネスを上げてインテルを迎え撃つことができれば、2-0で勝つっていうのは難しくないですよね。でもカテナチオの国のチャンプなのでインテルは。しかもイケイケでオラオラの織田信長みたいな性格なのになーヘッドコーチのジョセ“あんにゃろう”モウリーニョったら固いからなー、勝負どころでは……ガッチガチに守ってくるってことも当然やるだろう。ちくしょう。させねーぞ。アウェーで一点とっておいたことが利いてくるはずだ、と思いたい。しかし魂のDFプジョルが出場停止でイニエスタもやっぱり駄目か?
ならばわれらがペップ・グァルディオラのカリスマとコーチングに期待したいところだが、この点においても余裕を感じさせるジョゼの発言が、1stレグ後に報道された。


「これは現実なのだ。だが、バルセロナではあらゆることが起こり得る。勝ち抜ける可能性は互いに50%ずつだ。それ以上でもそれ以下でもない。もし(決勝が行われる)マドリーに行くことになれば、われわれは胸を張って戦うだろう。たとえそうならなくても、われわれのファイティングスピリッツは最高であるということを証明するだろう」
 <中略> 
グアルディオラはやるべきことをやったし、素晴らしいさい配を見せた。わたしよりも優れていたと思う」
(C)MARCA.COM


わたしよりも優れていたと思う、だと? 
わたしよりも優れていたと思う、だと? 
わたしよりも優れていたと思う、だと?
「世界中に多くのコーチがいることはわかっている。だが尊敬するのはアレックス・ファーガソン、唯一人だ」
と言い放った、あのモウリーニョが?
わたしよりも優れていたと思う、だと?


こんにゃろーーーーーーーーちくしょーーーーーーーーーーこんにゃろーーーーーちくしょーーーーーーーーーーちくしょーーーーーーーーーーーーーこんにゃろーーーーーーーーこんにゃろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーちくしょーーーーーーーーーーーーーーーーーと語尾のばしてたら、あら、ほら、左岸に着いた。



水からあがって「こんにちは」と、かなしみに髪を振る。