リライトキッス、テュー。


チェゼーナ×レッチェ 】 
あの巨人の心が優しいかどうかは知らない。ただ彼は浅黄色の芝生にネロ・ブランコの外套を翻し、この日も贄を血祭りにあげた。まぎれもない狩人だった。チェゼーナ×レッチェ、プロビンツァ同士のゲームはこれぞカルチョの罠仕掛け合いっつーか餓えた山犬が涎ダラダラ垂らしながら獲物のまわり這ってるようなモードっちゅーか。やられる可能性が高くってもローマやミランなど格上とのジャムならカウンターを利かせられるっていうチェゼーナレッチェだとやりにくそうでした。



なんてったってレッチェの中盤の圧が密で出足も鋭かった。後半の15分くらいまでのボグダニはキープできず。ザッケリーニとスケロットの両翼にもボールが出ず。こぼれ球だってほとんど浚われて苦しんでたチェゼーナ。ピッチを縦に広く分布するレッチェの、その右アタッカーが高めのポジションにいたので、デビュー戦から二試合はチェゼーナ自慢の二気筒エンジンの左肺としてチームに真新しい血液を送り込んでた動脈的レフトバックことJAPAN代表ナガトモ選手もなかなか上がれず、フラストレーション溜まりそうだったのは後半の中盤ころまで。



しかしゲームを通じての長友選手を思いかえすと、危機回避能力と復元力をもってチームに貢献してた気がするん。役割がはっきりしてる分、ディフェンスに集中すればよかったゲームでもあったかな。レッチェにはこないだ長友選手がマッチアップしたミランのパトみたいな瞬発イナヅマ系のスプリンターはいなかった。



ここまで三試合見てきたチェゼーナは、固く守ってスゲー速い&すげーデカいアタッカー二、三人が狩に出かけるっていうイタリアのクラブっぽさバリバリ。「基本モードとしてのフルコートプレス? ありえへん! FWはチャンスをうかがって一発一瞬にかけるのが勝負じゃん!」このレッチェ戦もチェゼーナはワンチャンスをしなやかに射った。弓を引いたのはボグダニ、ボグダニのファインプレー。



ボグダニのシュートは文句なしの一撃だったけど、それよりかナニがヤバかったかっていえば高速域のダッシュ後における減速姿勢が、もう体幹に気が通うオフェンスのフォームであったことと、あの瞬間は敵DFが1〜2人は彼にくっついてた(くっつこうとしてた)のに、ボグダニは右甲のアウトサイドを使った繊細なトラップから速射できる位置にボールをコントロールした、あんぐり。あれがまぐれじゃないならボグダニはすんごいことになるけれど、もう31歳の経験ある選手だし、そんなクオリティにあるならビッグクラブが放っちゃいないさ、やん。



白い沈着、赤い緻密。ヴァレリー・ロバノフスキ。
超データ型スポーツプログラムの開祖といえばソビエト連邦共和国だが、連邦の崩壊後、このストイシズムを引き継いだのは他でもない、自由の国アメリカだった。