ユナイテッド×シティ、小古のうた、黄金の魚影、秋のカレー、写真倉庫


 白い面の奴らを見たかい?

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プレミアリーグ第9節
マンチェスター・ユナイテッド×マンチェスター・シティ


ユナイテッドがホームのオールドトラッフォードで「1-6」の敗戦。
しかも敵は同じくマンチェスターを本拠地とするシティだ。
このダービーマッチ、歴史的な惨劇ではなかったか。


シーズンの始まりには“このままユナイテッドが突っ走ってプレミアがつまらなくなるんじゃ……”と憂いた。
それだけのスケールとサイズがあった。
久々に見たユナイテッド。
リオ、エブラ。
ゲームに厭いたよう見えるベテラン達の焦燥っぷりはどうだ。
相手はプレミア首位のシティだ。
走れず、繋がらず、打てどこぼし、追えど奪えぬユナイテッドに勝ち目はなかった。
解説席にいたOBレジェンドのG・ネビルは毒舌をふるったはずだ。


そのシティだ。
斬新なフォオーメーションや目を奪われるコンビネーションがあるわけじゃない。
元祖イタリアの貴公子ことマンチーニに率いられた彼らは特別な戦い方をしない。
まず中盤で守備をして、敵のボールを獲る。
獲った選手が持ち上がり、もしくはパスを選び、敵が中央に集まりかけた頃にボールをサイドに叩く。
サイドメンが縦に勝負する。
ペナルティエリアにはFWとMFが力強く飛び込んでいく。
サイドからクロスが入る。
ペナで敵と競る。場合によっては削り、打って出る。
こじ開けたコースにシュートを撃ち込む。


これは、おそらく世界中の少年少女が繰り返しトレーニングしている基本的なアクションだ。
それを超一級の選手たちが素早く的確に、90分間繰り返す。
また、今日のシティのイレブンには適切な距離感があるように見えた。
攻撃にも守備にも迅速なスイッチングが可能であり、仲間とのユニットを瞬時に作り出せるようなポジショニングだった。


そしてシルバだ。
カナリア諸島が生んだ二枚目セカンドハーフは、よく切れる小刀のような体を自在なるアクセルワークで振りながら、誰より速く空隙スペースの出現に目を啓き、加速する。
ユナイテッドのDF陣はトップフォームであれば世界最高のクオリティだ。
だがシルバはそんな選手たちに囲まれようと、けっして焦らない。
焦らないどころか、自分より10cmも20cmも巨大な敵に迫られて、いよいよ冴えた。
細かなタッチでボールを滑らせ、抜群のタイミングで裏をかく。


シティのスタンドが絶頂の予感に痺れるユナイテッドのゲートが恐怖に緊縛される


チャンスタイムだ。
檻を貫いたシルバがぶ。
シティがタフに繰り返すオーソドックスな攻撃に変拍子を挿し、ときにルーレットを回すような動きでもってアクセントをつける。
「今日日の芝において戴冠に相応しいのは誰か」
驚愕と喝采までもを置き去りにするスピードが、サックスブルーのジャージに時間の霜をつける。
問いの、それが答えだ。
赤い悪魔ユナイテッドを凍りつかせたのが、スペイン代表のMFダビド・シルバだ。



kofuru no uta

(小古のうた/其の三)



 Sympathy to the wolf child
「小説を書いていると事実を話しても虚実として聞かれてしまう」
そう嘆いたのは誰だったか。
撮った映像にアルファベットが三文字だけあったことも、真夜中の川上から蛍よりずっと強い光が幾粒も流れてきたときの話も、一時間のうちに五つから先は数えられないくらい星が降った夜の慄きもそう、どれもタモリなき、いや、盛りも偽りも無い実話だった。


土手を歩いていた。
等間隔に竿が立つ川辺に声があがる。
「おおおおおお」
「わあ、すっげえな」
「なぁんだあ」
見れば釣り師たちだ。
結集の真ん中に細長い影が躍る。
何の種類はわからないが、その活き、その返り、その撓り。
釣り糸の先で暴れているのは、あきらかに魚だ。
「ほぁああ」
「見たこたぁねえ」
釣り師の姿が増える。
「なんじゃあ」
「まっキンキンじゃぁねえか」
金色の白昼夢を眺める気分だ。
口から尾まで金一色の魚だ。
釣り上げた男はどうするか。
撮影か、なんなら魚拓か?
動向を気にかけていると、男はおもむろに魚の口先を針から抜き、当たり前のように川に放した。
未練や無念の嘆が聞こえるかと耳を澄ます。
「だなぁ」
「あぁ」
「主だものなあ」
青天を暈に、釣り師の輪が解ける。
午後の日差しが水面に跳ねる。



 カリメロと呼ばれて

『むき栗とカジキマグロの秋カレー 〜マルメロ風味〜』
シロップ漬けにされたマルメロの缶詰があった。


マルメロ。
木瓜や花梨の親戚で、バラ科の偽果。
めずらしい果物なので期待が高かった。
食べてみれば固い洋梨のような食感が好みだ。
しかし、ほんの僅かにだけれど赤身魚や獣肉の血のような臭みがあるようで、どうにも口にあわない。
捨てるのも惜しいと考えていたときにカレーの風味にする案が浮かんだ。


茹でた栗は皮がついていても気にならない。
漬けにしておいたカジキマグロは、食べる直前にステーキにするという手もある。
ツナ缶と一緒に煮込めば海の香りがするカレーだ。
たっぷりの秋野菜を頂こう。



 じゅう、じゅう、じゅう

『写真倉庫に写真を搬入』
http://blog.livedoor.jp/yamamomomo5371/
(FROM Hが山本浩生。From Nが黒川直樹)


ケダモノひとなりはりつけに。
標識写真に撃たれた。
トリモチのように粘りつく真空。
脳裏にひろがる白がヒタつく。
標識。アイコン。記号。
昨日聞かせてくれた「絵を教える」に通じてるところが、また憎らしい。