汚せば世界がリアルに見えるだろうというのは、違うんですよね。(BY 安彦良和)


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矢作 「2001年宇宙の旅」はよくできていたけど、そこ(おなじSFというジャンルの映画でも、スターウォーズのように金属が汚されていたり戦闘服が汚されているような、キレイを標榜しない演出)はなかった。あまりにも清潔で無機質。無重力空間を汗が飛んでいくっていうカットはあるけど、その汗で汚れていないんだ、シャツが。

安彦 スペースオペラに限らず未来ものっていうのは、「スターウォーズ」以来、全部汚しが入るようになった。未来は汚れているんだ、と。でも、汚せば世界がリアルに見えるだろうというのは、違うんですよね。いくら汚しを入れて、ディテールを描いても、それでリアリティを得るかというとそうではない。でも、今のリアリティの方向性はそっちにいっちゃってる。漫画では同じようなことを大友克洋が開拓しましたよね。彼はちゃんと汚れを描いた。<--->それ以降みんなが汚れを描きはじめた。特別に才能がなくても描けるんですよね、その手のリアリティは。でも、そこを突き詰めていっても真のリアリティにはたどり着かないんですよ。(p352)

(アニメ・マンガ・戦争/安彦良和